閑古鳥屋の2019〜2020海外旅行記 @ラテンアメリカ、中欧

閑古鳥屋といっても、店は開いていません。コマツシンヤさんの漫画から借りました。2019年に南米に飛び立つところから記録をつけ始めました。内容が面白いかは置いといて、とりあえずオンライン上に旅日記みたいにして残せるのは素晴らしいです。30代、東京出身、文学部卒。大学院での専攻はラテンアメリカ文学。

ブエノス・アイレス ② サン・テルモ地区 〜憂愁のタンゴシティー〜

前回は、ブエノス・アイレスの中心地区を巡り歩きました。今回は、その南側の地区、下町のサン・テルモに行ったときのことを書きます。

 

地球の歩き方」にあるサン・テルモ地区の説明が秀逸でした。「ノスタルジックなムードが漂うエリア(中略) 1870年に黄熱病が町を襲い、市街地に住む裕福な人々はレコレータ地区に移ったが、この地域に住む人々にはその余裕がなかった。人々はうっぷんばらしに酒を飲み、歌を歌い、そして踊った。アルゼンチンのタンゴはそんな苦悩のなかから生まれたのである」。ここにあるとおり、サン・テルモは下町というか裏町というか、市井の人々の哀愁や熱気みたいなものが渦巻くエネルギッシュなエリアですね。当時感染症に苦しんでいたのに、うっぷんばらしに酒を飲んでいたというのが良いですよね。しかも、歌って踊っているし。

 

サン・テルモの名物といえば、ドレーゴ広場で毎週日曜日に行われる骨董品市が有名ですね。実際は広場からずっとはみ出して、周囲100mくらいまでの街路や公園でも露店が立ち並んでいました。週末は全体が華やかなお祭りムードに包まれています。ちなみに規模は小さいですが、土曜日も露店がちらほら出始めていて、前夜祭としてなかなか楽しめます。旅行滞在時は日曜1日では満喫しきれないので、土日2日間とも楽しむのがオススメです。

f:id:kankodoriya:20200308175837j:image

ドレーゴ広場で行われていたタンゴダンスのパフォーマンスf:id:kankodoriya:20200309182831j:image

 

広場だけでなく、その周囲の街路にまで

市は広がっています。「南米のパリ」と称されるだけあって、絵画や金銀のアンティーク品、アクセサリーや古書、雑貨などを売る露店が立ち並び、古くて文化的な雰囲気がたまらない。土産物屋で売っているような大量生産品を売る店は少なく、オリジナリティのあるハンドメイド品が多かったです。

f:id:kankodoriya:20200308175103j:image
f:id:kankodoriya:20200308175849j:image
f:id:kankodoriya:20200308175900j:image
f:id:kankodoriya:20200308175058j:image
f:id:kankodoriya:20200308180131j:image

露店ではありませんが、絵画や紙物、アンティークなどを並べた店舗もたくさんありました
f:id:kankodoriya:20200308175054j:image

ガード下の薄暗い場所にも古本が並びます!

 

ドレーゴ広場から5月広場へとつながる路地にも、ご覧のとおり露店がびっしりでした。度重なる大恐慌によって、アルゼンチンの人々はきつい貧困を何度も経験しました。いざというときに国や企業は信用できないということを経験から知っているため、彼らは自分たちで必要な物を作り、国や企業に依存せずに生きていくための習慣を身につけています。そのため一般の人々もわりとなんでも作っちゃう傾向があり、こんなふうに露店をバーっと出せるくらいに出店者が集まるのかなと思います。
f:id:kankodoriya:20200308175132j:image
f:id:kankodoriya:20200308175117j:image

 

下の写真はサン・テルモの南側にある大きなレサーマ公園です。こちらでも週末は出店がありました。ここは古着が多かった印象です。ノスタルジックなメリーゴーランドがあるのも楽しい。
f:id:kankodoriya:20200308175049j:image
f:id:kankodoriya:20200308175921j:image
f:id:kankodoriya:20200308180117j:image
f:id:kankodoriya:20200308175129j:image

屋台で食べた「チョリパン」と呼ばれるデッカいソーセージを挟んだホットドッグです。肉肉しく、パンも硬いため、食べ応えバツグンです。

 

レサーマ公園から通りを挟んだ場所には、ロシア教会があります。カトリックがほとんどの南米には珍しいですね。雰囲気はカトリックとかなり違い、外装が玉ねぎ型のドームだったり、内側の絵画もロシア的というか、大地の匂いがするようなものでした。訪れた時はたまたまタイミングが良く、ロシア正教の聖歌のようなものを歌っている最中でした。スペイン語ではなかったので、たぶんロシア語かな?

f:id:kankodoriya:20200309205820j:image
f:id:kankodoriya:20200309205815j:image

 

ドレーゴ広場の近くには、常設の大きな市場があります。バルやカフェなどの飲食店がたくさん並んでいて、肉屋や古本屋、アンティークショップなども雑多な感じで並んでいます。一日中いられるくらい、バリエーションに富んでいました。
f:id:kankodoriya:20200309210916j:image
f:id:kankodoriya:20200308175033j:image
f:id:kankodoriya:20200308175912j:image
f:id:kankodoriya:20200308175840j:image

市場内の古本屋さん。とても良い雰囲気
f:id:kankodoriya:20200308175122j:image

紙物も充実
f:id:kankodoriya:20200308175917j:image
f:id:kankodoriya:20200308175844j:image
f:id:kankodoriya:20200308175112j:image

これは市場のタコス屋さん。パタゴニアビールをドラフトで飲めるのが嬉しい

 

この地域はレトロなカフェや、タンゴショーを楽しめるタンゲリアというカフェも数多く点在します。文化的なエリアです。下町でありながら、東京の中央線沿いみたいなサブカル臭も漂っていました。
f:id:kankodoriya:20200308175041j:image

レトロでビッグなカフェ
f:id:kankodoriya:20200309210911j:image
f:id:kankodoriya:20200308175125j:image

こちらは映画学校。右側のカラフルなおじさんは、映画を題材にした作品を数多く残したマヌエル・プイグがモデルです。
f:id:kankodoriya:20200308175853j:image

ブエノス・アイレスを代表するタンゲリアEL VIEJO ALMACEN
f:id:kankodoriya:20200308175107j:image
f:id:kankodoriya:20200309182834j:image
f:id:kankodoriya:20200309204509j:image

こちらはウォン・カーウォイ監督作品「ブエノス・アイレス」にも出てきたタンゲリア

宿泊先もタンゴにゆかりがありました。その名もCarlos Gardelホテルです。安宿ではありますが、清潔で親切な対応でした。食堂の壁にはCarlos Gardelの写真がたくさん。イタリア人移民の若者が、タンゴ歌手としてコミュニティからのし上がってきたのだな、というストーリーが写真から見えました。

f:id:kankodoriya:20200308175045j:image
f:id:kankodoriya:20200308180111j:image

 

サン・テルモには現代美術博物館という、現代アート寄りな施設があります。館内はわりと広くて見応えがありました。水曜日は無料!

f:id:kankodoriya:20200309210848j:image
f:id:kankodoriya:20200309210845j:image
f:id:kankodoriya:20200309210837j:image
f:id:kankodoriya:20200309210842j:image
f:id:kankodoriya:20200309210852j:image

 

下町だなんて言っていますが、街並みや建築物はヨーロッパの古い都市のように美しかったです。建築物は高さが揃っていて、計画的に街づくりを進めていたのがわかります。古い物を大事にするこういう文化は羨ましいですね。
f:id:kankodoriya:20200308175905j:image

 

最後に、こちらはサン・テルモ地区で泊まった2箇所目のアパートの1室からの眺めです。
f:id:kankodoriya:20200308175137j:image
f:id:kankodoriya:20200308180126j:image

高層建築群の向こう側には古い港湾の街、ボカ地区が広がっています。治安が悪いと良く言われるエリアですが、次回はそちらに行ってみたいと思います。

 

ではまた